2024年10月
2024年9月に発表されたシンガポール人口統計データと弊社独自の分析を加えた、最新のPR承認傾向についてお伝えします。
PR人口の推移:
シンガポールのPR人口は、2023年6月の538,600人から2024年6月には544,900人へと1.17%増加しました。前年の増加率3.7%と比較すると、2024年は増加率が緩やかになっています。これはコロナ禍の影響で国境の閉鎖や移動制限により、シンガポールでも移民や永住権取得の審査や手続きが過去に遅延したことと関係していると考えられます。
コロナ禍に積み残しとなっていた申請の処理が2021年以降に急速に進み、そのためPR取得者数が増加したことは知られています。2023年にはこうした急激な増加の反動が落ち着き、またコロナ禍の不確実性が薄れたことで、移民政策やPR審査の手続きも再び通常のペースで進められるようになりました。今回の成長率の減速は、社会的・経済的な状況が正常化し、申請プロセスも安定したペースで行われ始めたことを示していると考えられます。
2024年に増加率が安定して緩やかになったことは、急激な人口変動や緊急的な対応から、計画的で安定した移民政策への回帰を反映していると言えます。
シンガポール人口(2024年6月現在)
PR取得者数:
2023年は34,491人が新たに永住権を取得しました。この数字は、2022年の34,493人と2名しか差がありません。過去5年間の平均取得者数は年間32,600人で、これはその前の5年間の平均31,100人と比較すると若干増加しています。
シンガポール政府は、計画的に長期的な人口成長を推進するため人口目標を設定しています。ただ、急激な人口増加は避け、また社会インフラや経済への影響を最小限に抑える政策をとっているため、PR発給数においてもICAが毎年定量的目標をに沿って発給数を管理していることがこの数字からも推測されます。
2023年PR/国籍取得者属性
PR取得者の年齢層:
2023年にPRを取得した方の年齢分布では、31~40歳が最も多く33.6%、次いで40歳以上が12.5%を占めています。2022年のデータと比較すると、40歳以上の割合がわずかに増加(2022年は12.2%)、31~40歳の割合はやや減少(2022年は34.2%)しています。 このデータからいくつかの傾向が読み取れます。
まず、PR取得者の中核を占めている31~40歳(33.6%)の年齢層が多い理由としては、シンガポールが経済成長を維持するために、働き盛りで高度なスキルや経験を持つ人材を積極的に受け入れていることが考えられます。また、40歳以上のPR取得者の割合が2022年の12.2%から2023年には12.5%に増加していることは、ICAが経験豊富で専門性の高い人材を引き続き評価していることが示唆されます。
40歳以上の層は、特に経営職や専門的な分野でリーダーシップを既に発揮している方が多く、シンガポールの知識経済の強化に寄与できるため、PR申請で評価されやすい傾向にあると考えられます。一方で、従来の働き盛り層に加えて、30歳以下の若年層のPR申請も積極的に受け入れる方向にシフトしている傾向も見られます。これは、シンガポールで多様な分野での人材ニーズが広がっていることや、社会全体のバランスを保とうとする意図を示唆しています。
PR取得者の学歴:
2023年はPR取得者のうち82.8%が高等教育修了者でした。この割合は、2022年の81.3%と比べてわずかに上昇しています。一方、17.2%の取得者は中等教育修了者以下であり、こちらの割合は2022年の18.7%よりも減少しています。
これは昨今のEP・S Pass発給基準の厳格化との関連が推測されます。近年、Work Passの発給基準が徐々に厳格化されており、最低給与要件の引き上げや評価基準の強化が進んだ結果、より高いスキルと学歴を持つ人材にPassが発給されやすい状況となっています。そのため、数年前と比べPassの更新が難しくなり、高度なスキルや学歴を持つ人材がPR取得にシフトしている可能性があります。シンガポールに長期滞在して働き続けたい高度教育修了者がPR申請を増加させ、その結果、PR取得者の中で高等教育修了者の割合が増加していると考えられます。
PR取得者の出身地域:
2023年にPRを取得した人々の56.8%は東南アジア出身者で、35.8%はその他のアジア諸国出身者です。前年と比較すると、東南アジア出身者の割合は減少(2022年は60.9%)、その他のアジア出身者の割合は増加(2022年は31.1%)しています。
東南アジア出身者の減少の背景には、シンガポール政府がPR発給において、地域的なバランスを考慮していることが考えられます。シンガポールは、多民族・多文化国家として多様な人口バランスを維持するため、従来から特定の地域に偏らない移民政策が進められています。逆にその他のアジア出身者の増加は、東南アジア以外のアジア諸国から高度なスキルや学歴を持つ人材を積極的に受け入れていることを示しています。地政学的に重要なハブとなるべく、東南アジア諸国だけでなく、その他のアジア諸国とも強固な経済的・政治的関係を構築するため、地域ごとの国際関係の強化に合わせた移民政策が進んでいる可能性を示しています。
今年の人口統計からも、政府は長期的な成長を促進するため、持続可能な移民政策目標に沿った移民数の管理を行なっていることが読み取れます。PR発給においても、発給数や年齢層、学歴、出身地域の構成に微調整は見られるものの大きな方向性の変更はなく、経済的な成長と社会的な安定を両立するため、申請者の属性に基づいてより多様な人材をバランスよく受け入れる方向に向かっていることが推測されます。
シンガポールでPR取得を検討している方は、ぜひ最新の情報を参考にしつつ、申請の準備を進めてください。
申請に関するご質問や弊社のサポートについては、お気軽にご相談ください。