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従業員のPR取得を支援する企業のメリットと、支援しないリスク

2024年10月


2023年に導入されたCOMPASSでは、EPを申請する社員個人の学歴・資格といった資質だけでなく、EPのスポンサーとなる会社のローカル人材雇用への貢献度なども審査対象となりました。制度の狙いは、シンガポールで就労できる外国人をローカル人材では代替が難しい高レベルな人材に絞り、代替可能な職種にはローカル人材を雇用することを促進することとされています。 


このシステムが導入されて以降、これまで問題なく更新できていたEPやS Passが却下される事例は多く発生しており、この傾向は今後も続くと見られています。


昨今のEP取得や更新を取り巻く環境を踏まえ、社員のPR取得を支援する会社も増えてきました。今回は雇用主が社員のPR取得を支援する場合のメリットと、支援しない場合のリスクについて客観的+主観的に考えてみたいと思います。


<社員のPR取得を支援するメリット>

優秀な外国人人材をPassの更新に左右されず継続雇用できる

Passの承認基準が厳格化されたことに伴い、従来無理なく更新できていた人材のPassの更新が近年難しくなっています。こういった方々がPRを取得すれば、更新に左右される事なく優秀な人材を保持することができます。


​COMPASSのDiversityスコアの向上

外国人人材がローカル人材に転換することにより、COMPASSの企業属性であるDiversityのスコアが向上し、将来のEP申請時に有利になります。


・新たな外国人人材雇用機会の創出

EP・S Pass人材がPRに転換すると、PassのQuotaが改善することにより、同じ人材を確保したまま、空いた枠で新たに優秀な外国人人材の雇用の機会を得ることができます。


・柔軟な給与設定

EP・S Pass人材の最低給与はMOMにより定められています。この金額は基準の改定やPassホルダーの年齢上昇に伴い上昇します。社員がPRを取得した場合は、Pass更新に伴う意図しない給与改定が不要になり、各企業の給与体系に合わせた給与設定が可能になります。


・EP・S Passの更新に割く社内リソースの削減

定期的にEP・S Passの更新申請に必要となる社内リソースが不要となり、空いたリソースをより重要度の高い業務に充てることができます。


・従業員満足度とモチベーションの向上

当社がこれまでサポートさせていただいたお客様を拝見する限り、会社支援でPR申請をされた方は会社への愛着が高い傾向にあると感じました。会社のPR取得支援は、社員の長期的な成長や福祉に関心を寄せていると示すことにつながり、社員は企業から信頼され、長期的な雇用をサポートされていると感じるケースが多いようです。


<社員のPR取得を支援しないデメリット>

・モチベーションと生産性の低下

社員にとってPRは、長期的な生活安定やシンガポールにおけるキャリアのステップアップの手段となります。しかし会社がPR取得を禁じると、社員は会社が自分の将来に配慮していないと感じる場合があり、仕事に対するモチベーションが低下する可能性があります。その結果、生産性や業務への積極性が損なわれるリスクがあると考えられます。


・社員とのエンゲージメントの低下

PR取得の禁止は、社員と会社の間の信頼関係を損なう要因になるリスクがあります。社員が長期雇用や将来の安定を望んでも叶わない場合、会社に対して疑念や不満が生まれ、エンゲージメントが低下する可能性があります。


・離職率の上昇

優秀な社員の中にはキャリアを長期的に展望できる企業や国へと転職を考える人は多く、当社にご相談をいただくお客様の中にも、PR取得後には転職を希望されている方も少なからずおられます。PR取得禁止が、かえって有能な人材が他社へ流出し離職率が上がるような、企業側が意図しない結果につながっている事があるようです。


<まとめ>

雇用主がPR取得を支援した場合、コンパススコア改善のような客観的なメリットが得られるだけでなく、当社の限られたデータによりますが、社員の満足度や忠誠心が向上し、離職意欲も抑えられる傾向があるようです。非日系企業の中には、実際社員のロイヤリティー向上のため、福利厚生の一部としてPR取得支援を活用している企業もあります。


逆にPR取得を禁じた場合、社員の働きやすさや企業への信頼性に悪影響を及ぼすことがあり、本来は離職を防ぐ施策だったのに、かえって優秀な人材の流出につながるケースもあるようです。


社員のPR取得が、企業と社員の長期的な信頼関係の構築につながりに結びつくように、PR取得後のキャリアパスについて話し合うなど、企業が社員の将来や成長に寄り添う風土を醸成し、両者が共に発展していける環境が整えられればと思います。



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